良い教材なのに、なぜか学校に通らない。学校教材の営業では商品の良し悪しの前に、いくつもの「壁」が立ちはだかります。教材を選ぶのは現場の先生でも、買うかどうかを決めるのは管理職や教育委員会です。さらに長年の出入り業者がいて、予算は年度で動き、導入できても使われなければ続きません。この記事では、学校教材の営業でぶつかる購買の壁を一つずつ整理し、それをどう越えていくのかをお伝えします。
学校教材の営業で最初にぶつかる「二段の壁」
最初の壁は、相手が一人ではないことです。「選ぶ人」と「決める人」が分かれているところから、つまずきが始まります。
選ぶのは先生、決めるのは管理職や教育委員会
学校教材の営業でまず知っておきたいのが、選ぶ人と決める人が違うことです。どの教材を使うかは、授業を担当する現場の先生が選びます。けれどもそれを買うかどうか、予算を出すかどうかを決めるのは、校長などの管理職や、公立なら教育委員会です。教科書は、公立では教育委員会が、国立や私立では校長が採択します。問題集やドリルといった補助教材は、校長の責任で選び、教育委員会への届け出で済むことが多く、実際の判断は学校の中で完結します。だから先生に気に入られても、決裁の段で予算がつかなければ採用には至りません。現場の先生が「これを使いたい」と声を上げてくれても、管理職の段で「今年は予算がない」「前例がない」と止まることは珍しくありません。先生に選ばれることと、決める人を動かすことは別の仕事です。両方に手を打たなければ、検討は途中で止まってしまいます。
もう一つの壁=長年の出入り業者
もう一つの壁が、既存の取引です。多くの学校には、長年付き合いのある教材会社や代理店があり、新規の売り込みが入り込む余地は大きくありません。教科書や教材は、指定された取扱書店など決まったルートで流れることも多く、流通そのものが外から見えにくくなっています。新規で食い込むには、いまの出入り業者にはない価値を、決める人に分かる形で示す必要があります。古くからの取引は、値段を少し下げた程度では動きません。授業の負担が減る、生徒の成績や様子が見えるようになる、といった現場の困りごとに直接効くことを、数字や他校の例で示せて初めて、切り替えの検討が始まります。
予算と時期の壁
決める人にたどり着いても、お金と時期が合わなければ動きません。ここは事前に流れを押さえておけば、避けられる壁です。
予算は年度単位、決まる時期に間に合わせる
学校の予算は年度で動きます。次年度に何を買うかは前年度のうちに固まるため、提案のタイミングを外すと、検討は翌年に持ち越されます。公立なら教育委員会の予算サイクルに合わせ、予算が固まる前の時期に届けておくことが欠かせません。年度が始まってから飛び込んでも、その年のお金はすでに割り振られていることがほとんどです。
補助金が後押しになる
費用の壁を下げてくれるのが、国や自治体の補助金です。ICTやデジタル教材では、端末や校務の仕組みに補助が出ることがあり、「実質の負担はこれだけ」と示せると、決裁が通りやすくなります。補助の条件や申請の仕方まで分かっていると、相手はさらに動きやすくなります。費用を相手任せにせず、お金の見通しまでそろえて持っていくことが大切です。提案を届ける時期も、予算と同じくらい大切です。公立なら、翌年度の予算を組む前の春から初夏に当たっておくと、検討の机に乗りやすくなります。

「通った後」も壁になる
導入が決まれば終わり、ではありません。使われずに眠ってしまえば、翌年の継続にはつながりません。
導入して終わりにしない
教材やシステムは、入れて終わりではありません。導入したのに現場で使われない、いわゆる「立ち上がらない」状態は珍しくありません。端末が配られても活用が追いつかない、研修が足りず使い方が分からない、という声は私の知り合いの管理職からも上がっています。配られた端末が十分に活用されていないケースも目立ち、使われなければ翌年の予算で続けてもらうことは難しくなります。仕組みを入れることと、使われることのあいだには、もう一つの壁があります。
現場が使える形まで支える
だからこそ学校教材の営業では「売った後」まで設計しておくことが、次の受注につながります。導入後に研修や活用の支援までついてくると分かれば、決める側も安心して予算を出せます。先生が無理なく使える形まで持っていけるかどうかが、一度きりで終わるか、長く付き合えるかの分かれ目です。導入後の伴走まで引き受けられる相手は、学校にとっても安心して任せられる存在になります。
購買の壁を越える進め方
壁は一つではありません。だからこそ、ばらばらに当たるのではなく、一つの流れとして組み立てることが効いてきます。
三つの壁を一つの流れでそろえる
先生に選ばれる価値、決裁者に予算で通る理由、導入後に使われる支援。この三つを一つの流れでそろえることが、学校教材を通す近道です。現場には授業での使い方が伝わる材料を決める人には費用と効果が分かる資料を、と渡すものを分けて用意しておくと、二段の壁を同時に越えやすくなります。現場の先生が校内で「これを使いたい」と上に上げてくれる状態をつくれると、決裁はぐっと近づきます。先生を味方にしつつ、決める人に届く材料を用意する。この両輪が、購買の壁を越える肝です。公立の予算や制度の動きは国の方針に沿うため、全体像は文部科学省の公式サイトでも確認できます。
学校教材を学校に通すための、本記事の要点を整理します。
- 1 教材を選ぶのは現場の先生でも、買うかどうかを決めるのは管理職や教育委員会という二段の壁がある
- 2 多くの学校には長年の出入り業者がいて、決める人に分かる価値を示さないと食い込めない
- 3 予算は年度で動くため時期を合わせ、補助金を使って費用の壁を下げる
- 4 導入して終わりにせず、現場で使われる支援まで設計することが次の受注につながる
ここまでの壁の越え方は、知っていれば自社でも実践できます。ただし現場と決裁者で渡す材料を変え、予算の時期を読み、導入後の活用まで支える流れを、本業と並行して回し続けるのは簡単ではありません。どこか一つの壁で止まれば、良い教材でも採用には届きません。
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